「水は異なもの味なもの」第6回 炭酸ガスの溶解
今回は、炭酸ガスのような気体が水に溶けるということについてお話しします。
ビールや炭酸飲料には、炭酸ガスが溶けていて、グラスに注ぐと、
泡とともに盛んに出てきます。
ガスが水に溶ける量は、圧力と温度によって決まります。
このことをビールに当てはめてみると、どうなるでしょうか?
ビールの炭酸ガスは、原料の一つである大麦からできた麦汁の中の糖分が、
酵母の働きによって分解されて、アルコールとともに発生したものです。
ビールの中は過飽和の状態、つまり、無理に炭酸ガスを溶けこませた状態に
なっています。ビールの栓を外すとビンの中の圧力は大気圧に戻り、
ビールに溶けこんでいた炭酸ガスの一部が溶けきれなくなり泡となって出てきます。
では、ビールがおいしく感じる温度について、考えてみましょう。
温度に関しては、溶液の温度が高くなると気体の分子運動が活発になり、
気体は溶液に溶けにくくなりますが、反対に温度が低くなると、
気体は溶けやすくなります。
このため、ビールを冷やせば冷やすほど、栓を外したときには
ビールの中の炭酸ガスが多く残り、泡立ちが悪くなってしまうのです。
ビールの泡は風味を逃がさないふたの役割もしているといわれる上、
冷やしすぎると、蛋白質や炭水化物などの成分が結合しやすくなり、
風味を損ねてしまう欠点もあります。